--
--
Inserted: 12-16-2000

■ I N D E X ■ Next ▼
 Die Bahnwelt STORY (c)1992 GLODIA
O P E N I N G


ウィィィィィン。耳障りな音を響かせ船は行く。
何処から…? それは、太古に滅びた街。
何処へ…? それは、今を生きる街。
ここは、何処…? ここは次元を超える壁。
やがて船は辿りつく。彼らの住まうあの場所へ…。


Die Bahnwelt OPENING

Die Bahnwelt


--
---
--

街は何時になく騒がしかった。
謎の飛行物体が、出現したというニュース。
それだけで、詳しい情報はまだ入ってこない。
私、ラーニアも半信半疑で、それほど気には留めていなかった。
そしてようやく今、その物体がスクリーン一杯に映し出された。
それは、空を翔ける巨大な船だった。
古びていて所々錆付いている。でも、何とも言えない迫力がそこにはあった。
「…上空に忽然と姿を現し…」「…古代文明の遺跡とも…」
アナウンスの断片に、私の胸が高鳴り出すのを感じた。
いてもたってもいられない!!私は、カノールのいる部屋へと駆け出した!
「ねえ、スクリーンでニュースをやっているわよ」
自動ドアが開くと同時にカノールに話し掛ける。
「ああ、見に行こう」
カノールは、見ていた新聞を置いて、立ち上がった。
多分、飛行物体の記事でも読んでいたのだろう。
私は、カノールの背中を押して、スクリーンのある部屋へ急いだ。

飛来した巨大飛行物体は依然として沈黙を続けており、議会では攻撃的意図を持って
飛来したものではないとしながらも、軍部による監視を今後とも継続し、
応答のない場合は調査隊を派遣する方向で検討を進めております。
また 有識者の中にはこれを古代大戦期文明の遺跡であるという見方をする者もおり、
貴重な遺跡であると同時に未知数の攻撃能力の危険を指摘する声も出始めております。
繰り返します。巨大飛行物体の全長は 4km。アルガスラル海上空 38000mを
非常にゆっくりとした速度で極点方向に向けて航行を・・・

アナウンス半ばで私は口を開いた。
「何かおもしろいものが見つかりそうね」
「そうだな。議会の調査隊が派遣される前に行動しなきゃ。
今夜中にやつに乗り込むことにしよう」

トレジャーハンター。それが私達の仕事。
見た事もない素敵な宝を求め、未知の遺跡を探検する。
こんなものを見せつけられて、黙ってじっとしていろと言うほうが無理だ。
今回はどんなものが待ちうけているのか?考えただけでワクワクしてくる。
「素敵ね。財宝とか宝石とか積んでないかしら」
私は、胸の内を素直に言葉にした。
「……。たぶんないと思うけど……」
そうかもしれないけどさ、カノール、夢ないよ。

--
---
--

「すなわち、古代大戦期文明によって創造された時空都市、
ヴェレアトールより飛来しせし船。確率 76%」

機械的な声が、薄暗い部屋に響く。
そこに一人の男がたたずんでいた。
暗い色のマントをはおった、初老の大男。
その深い皺を刻んだ厳しい顔から、人を寄せ付けぬ空気をかもし出している。
その男が、言葉を発す。
「時空移転を実現する搬送波はいかなるエネルギー形態を有するか」
「不明」
コンピューターは、即答した。
それに、気を悪くした様子も無く、続けて質問を投げかける。
「当該船の駆動機関は>ヴェレアトールとの物理的相互作用を必要とするか」
「56% 肯定的」
男の右目にある片眼鏡がギラリと不気味に光った。
ゆっくりと頭をあげた男は、大声をあげる。
「…バルキーニュ!
部屋の影になっている部分から小型のロボットが現われた。
「ここに。Professor
決して感情のない声。男はロボットの方を振り向かずに続ける。
「あの古代船を捕獲、調査する。支度をせよ」
「了解いたしました。Professor
意見を言うわけでも、反論する訳でもなく、ロボットはあっさりと返答した。

--
---
--

俺は、小型の飛行艇を操り、例の巨大飛行物体に近づいていた。
「クローキング・デバイス作動よし」
こいつには特製の遮蔽装置を搭載している。今、そいつを作動させた。
これで、軍部の監視が持つレーダーに捕捉されることはまずない。
が、いくらなんでも、監視船の目の前に出ていっては、気付かれてしまう。
「ねぇ、どっから中に入るつもり?」
ラーニアも、同じことを心配している。
「軍部の監視に見つからないようにしなけりゃ。
艦底の排気ダクトからでも潜り込むか」

俺は、操縦桿を操り、レーダーの集中していない巨大艦の底部に針路を向ける。
「よし!GO!」

監視に見つかる事もなく、俺達は、巨大船に潜入する事が出来た。
「気をつけろよ」
後ろに続くラーニアに声をかける。
「誰もいないみたい。静まり返っているわ」
確かに、今まで通ってきた通路は、やけに冷たく人の気配がしない。が、
「動いているんだぜ、こいつは。 人…かどうかは
知らないけど、なにかいるはずさ」

「自動操縦ってことだってあるわよ」
すかさず突っ込むラーニア。しかし、何時何処から襲われるかも
知れない状況でそれに答える余裕は無かった。

「ここが動力室かしら」
どのくらい歩いただろう。俺達はやけに広いホールを見つけた。
ホールの中央には、人の脳を思わせる複雑に配線の絡んだ柱が鎮座していた。
ラーカイアに現われし者は久しい」
何処からか、聞き慣れない声がした。
「誰だ! どこにいる」
「・・ あの金属板よ」
ラーニアは、柱の下にあるコントロールパネルのようなものを指差した。
確かに、そのコントロールパネルには金属板が収められていた。
ラーカイア? この船のことか?」
俺は、金属板に向かって質問を投げかける。
ラーカイアヴェレアトールよりい出てヴェレアトールに帰る」
金属板が声を発しているのは間違いなさそうだ。
ヴェレアトール?何処かで聞いたような…。
と、ラーニアの顔が急に険しくなる。
ヴェレアトールですって? それって伝説の都市のことじゃない?
やっぱりこれは古代文明の遺跡なのね」

驚きと、歓喜の混じったラーニアの声が、ホールに響く。
そうか、それだ。思い出した。
ヴェレアトール…伝説の時空都市か…
この船は時空間を超えることができるのか?」

俺は、再び金属板に語り掛ける。
ヴェルビアスの力」
金属板は、ただそれだけ言った。良く分からない。
ヴェルビアスとは? この船の動力源なのか」
今度は具体的に、質問をする。
ヴェレアトールを支えるヴェルビアスの力」
どうも、的を得ない。さらに質問を続けようとした時異変は起こった。
「なに……なんか揺れてるわよ」
ここは空中だ。地震ではない。それと同時に大きな音がした。
「……爆発音だ。外でなにかが起こっている」
俺達は、金属板を持って、ホールの外に飛び出した。

--
---
--

突然の乱入者に、軍部の監視は緊張した。
巨大艦ほどではないものの、彼らの飛行艇の数十倍もある飛行艦が近づいてくる。
その飛行艦の中には、マントの男とその下僕らしいロボットが居た。
「軍の全艦隊につぐ。我が進路を妨害するものは全て破壊する」
威圧的な声がスピーカーを通して響き渡る。
「妨害していなくても破壊しています。Professor
感情のこもらない声で、事実そのままをロボットは言った。
これにはさすがの男も少し気を悪くしたらしく、ロボットを睨む。
Professor。軍の艦艇の掃射、全て完了致しました」
男の頭上のスクリーンに端正な顔立ちの青年の顔が映し出された。
しかし、彼の顔の半分は機械に覆われている。
彼がサイボーグであることは外見から容易に想像できる。
男は、満足そうな顔をした。
「よくやった、デスハーン。我が艦を古代船に接舷せよ。
わしはこれより古代船に乗り込み、調査を開始する。おまえは艦橋で待機するのだ」

スクリーンの青年に向かい一方的に指示をする。
「ご命令に従います。Professor
感情のこもらない声で青年は静かに答えた。
ガチャーン。その数瞬後、派手な音を立てて男の船は巨大艦に接舷した。

--
---
--

また、厄介な事に巻き込まれのただろう。まあ、それが魅力と言えば魅力だけど。
さっきのホールから飛び出した私達は、一旦、飛行艇にひき返す事にした。
収穫はないが、命あってのものだねだ。
揺れは収まったようだ。だけど、最後のあの小さな揺れは…。
なんか嫌なものが艦内に入りこんだような気がする。
私は、カノールと通路を疾走した。もうすぐ出口、というところで、
やっぱり、嫌なものと出会った。
ゲーリー教授!」
その人物を見て、カノールは叫んだ。
いつ見ても嫌な奴だ。暗いマントをはおい、あくまでも人を見下したような眼差し。
彼の過去は良く知らない。教授とか言われているからには頭は良いのだろう。
私達の探していた宝をかすめとっていったりする卑しい奴。
もてないよね、こういう奴。とか思いながら、私も睨み返す。
世界征服とか流行らない事をいっているらしいが、あながち戯言でもないのだろう。
教授の左右に立っているガードロボ。こいつらの破壊力は尋常ではない。
幾度と無くこいつらに苦戦を強いられた。下手に動けば命を失う。
「ふん、ねずみどもか……む…その手に持っているものは何だ」
ゲーリー教授は、私達の持ってきた金属板に目を付けた。
「おとなしくそれを渡せ! この船はすでに私のものだ」
何やら、大層なものらしい。が、それが分かって手放すカノールではない。
ウィィィィィン。何かの機械が動作したような音。
それと同時に船が大きく揺れる。
「…何事だ」
ゲーリー教授がよそ見をした。
「いまだ!」
この瞬間を狙い、カノールの掛け声とともに
私達は教授の脇をすり抜け、飛行艇に走っていく。
ウィィンという音はさらに大きくなっていく。
教授が追いつく前に、飛行艇に飛び乗る。
カノールは素早く飛行艇を発進させた。
巨大艦、ラーカイアから離れていく私達。
瞬間、凄まじい光が走った。
そして…。

--
---
--

ウィィィィィン。耳障りな音を響かせ船は行く。
何処から…? それは、今を生きる街。
何処へ…? それは、太古に滅びた街。
ここは、何処…? ここは次元を超える壁。
やがて船は辿りつく。住む者も消えた、彼の地『ヴェレアトール』へ…。

--
---
--

突然の意識の覚醒。
何が起きたんだ?俺は何をしていたんだ?
そもそも、何で操縦卓に突っ伏しているんだ?
眩しい。開きかけた目に容赦無く光が入りこむ。
目を開けると同時に、眠っていた脳が動き始める。
ああ、そうか。俺は、あの巨大船から脱出して…。
脱出して、どうなったんだ?
凄い光に目がくらんで、コントロールが効かなくなって、
そうだ。あれは何か強い力に引っ張られたようだった。
…、取り敢えず起きなくては。状況を確認しなければ何も始まらない。
ゆっくりと顔を上げて、最初に目に入ったのは、ラーニアの顔。
ラーニア…!無事か?」
とは言ったものの、とても無事そうではない。
呆然と、しかし、前方にある何かに見入っている。
「こ…ここは…、どこなの!?」
悲鳴にも似た叫びをあげるラーニア
俺は、ゆっくりと前を向く。…何もない。
目に映るものは、果てしない荒野と白い月のみ…。
俺も呆然となり、握り締めていた手が緩まる。
その時気付いた。俺は、何かを握り締めていた。
そう、あの言葉を紡ぐ金属板。
ヴェレアトールなのか!?おい!答えろ!!」
金属板に必死に話し掛ける俺は、さぞ滑稽に見えただろう。
しかし、その叫びに答えるものは無く、
金属板は、ただ鈍い光を放つのみだった。



Die Bahnwelt


to be continued ...
■ I N D E X ■ Next ▼


--
--