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Inserted: 05-13-2001

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 Die Bahnwelt STORY (c)1992 GLODIA
 #1 Forecs 廃都フォレクス III. −神殿−


街全体が赤い光を放っている。
そう思えてもおかしくないくらい、至る所で非常事態を示す赤いランプが点滅していた。
軍事基地を出て、私達は、再び廃墟の街にいる。
目的地の神殿は、もう、すぐそこだ。
非常事態だからだろうか?それとも神殿を護る為だろうか?
軍事基地に入る前より、ロボットの攻撃は激しい。
とは言っても、軍事基地のそれに比べればたいしたことはない。私達は難なく先へ進む。
「なんかもう、遠回りばっかりしてるわよね」
私は、ぼやいた。そこは、あの崩れた橋の向こう側だった。
軍事基地の前の亀裂といい、この崩れた橋といい、
私達を神殿に近づけまいとしているようにも思えた。
「はやく、神殿へ急ごう」
崩れた橋を恨めしく見ている私の気持ちを察したのか、カノールが急かす。
そうだ。こんな事をしている間にゲーリー教授
先を越されてしまっては元も子もない。
私達は、神殿の入り口まで一気に駆けぬけて行く。
…行こうとしたのだが。
「またかよ!」
カノールは、怒りを込めて言う。
そう、神殿前の広場で待ち構えていたのは、砲台とロボットの群れだった。
ただ、広場の外には、砲台の攻撃も届かず、ロボットも出てこないようだ。
砲台を一つ壊しては広場の外で体力を回復し、また広場へと突撃する。
これを繰り返し、砲台を確実に壊していく。砲台が壊れればあとは大分楽になる。
神殿の入口を通せん坊しているロボット達の攻撃を受けつつも、銃を放ち撃滅していく。
そして、遂に、私達は、神殿の入口に到達する事が出来た。
壁の模様や、想像上の動物をかたどった銅像が、
他とは明らかに違う雰囲気をかもし出している。
いったい、この中で待ちうけているものは何なんだろう?
ドキドキしながら、神殿の中に入っていく。

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カツーン。と、靴の音が響いた。
ここは、床も壁も石を使っているようだ。それが、何となく荘厳さを漂わせる。
…、本当にこんなところにマザーコンピュータがあるのだろうか?
「あまり壊された様子はないみたいね」
ラーニアが、周りを見渡しながら言う。
ゲーリー教授のやり方にしちゃ、珍しいな。
早くマザーコンピュータを捜しだそう」

ゲーリーらしくもない。もしかすると、ここにはよほど重要なものがあるのか?
考えていても仕方ない。先に進もう。
神殿の入口からまっすぐ奥に通路が続いている。
その通路から、所々左右に通路が分かれている。
多分、小部屋か何かに通じているのだろう。が、それは後回しだ。
俺達は、通路をまっすぐ進んで行く。
途中、ガードロボットに出くわしたりもしたが、
軍事基地で見つけた武器を使い、難なく退けていく。
途中、壁には槍を持った騎士のような銅像が飾られていた。
丁度、俺達の背と同じ位の銅像だ。ただ、その騎士の頭は異形のもののようだ。
外にあった怪物の銅像といい、この銅像といい、センスが良いとは思えない。
信者の証を持たざる者よ。この場より立ち去れ!」
突然の声に驚く。
…どうやら、銅像の前に立つと、音声が流れる仕組みになっているようだ。
信者の証だ?怪しげな宗教にはだまされんぞ」
俺は、毒づいた。どうせ、こけおどしだろう。
「人間、努力なしではうまい話はないのよねぇ」
ラーニアが、うんうん頷きながら言う。
…過去に、宗教がらみで何かあったのか?
通路はどこまでもまっすぐ続いていた。俺達もずっとまっすぐに駆けぬけて行く。
が、思わぬところで足止めをくらってしまった。
目の前の通路が左右から突き出した障壁によって閉じられてしまったのだ。
色々調べてみたが、どうやっても障壁は開かない。
「また、例によって、認証するものが必要なようね」
ラーニアがため息混じりに言う。
「仕方無い。横道を調べてみるか」
俺達は、やむなく来た道を引き返して行った。

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私達が、その場を離れると、閉ざされた通路が開いていく。
なんて嫌な作りなんだろう。とか思いながら、元の道を戻って行く。
左右にのびる通路の先には、どれも小部屋があった。
いくつかの小部屋の前には、番兵ロボットが鎮座し入口をふさいでいる。
近寄ると、かなり激しい攻撃を仕掛けてくる。のだが…。
「何だ?こいつら前にしか攻撃できないのか?」
そう、カノールの言う通り、横方向には攻撃してこない。
横から番兵ロボットを狙う事によって、案外あっさりと、倒す事が出来た。
うーん。これって結構間抜け?
まあ、何にせよ部屋には入れるわけだし。どうでもいいか。
次々に部屋に入っていったが特にめぼしい物は見つからなかった。
見つけた物といえば、エネルギーパックばかり。
「繰り返す。信者の証を持たざる者よ、この場より立ち去れ!
さもなくば、死あるのみ!」

相変わらず、銅像の前に立つと、こんな声が返ってくる。
うるさいったら仕方ない。って、無機物に怒ってもむなしくなるだけだけど。
全ての部屋を調べたが、認証する物は見つからない。
「おかしいな。どこか、探しもらしたか?」
カノールは、銅像の前でため息をついた。
…あれ…?
カノール、この銅像は何も言わないのね」
そう、どの銅像も嫌になるぐらい例の台詞を繰り返すのだが、
この銅像に限っては、前に立っても何も反応が無い。
「壊れているんじゃないか?…ん!?」
カノールは、銅像の足元にひざまづいた。
崇拝心の表れって訳では無さそうだけど。どうしたのだろう?
ラーニア、ここ見てみろ」
カノールが銅像の台座を指差した。かすかだが、そこから光が漏れている。
これって、もしかして…。
カノールは、おもむろに銃口を銅像に向けた。
パシュン、パシュン。何発か撃つと、その圧力で銅像がスライドし始めた。
「隠し、通路?!やったぁ!!」
銅像の台座の下から現われた階段を見て、私は、歓喜の声を上げた

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階段の下は、ちょっとした通路になっていて、3つの部屋の入口があった。
上よりも、ロボットの攻撃が激しい。きっと何か重要なものを護っているのだろう。
真ん中の部屋で俺達は、紋章をかたどった物体を見つけた。
ちょうど、手のひらと同じ位の大きさで、中に何か機械が入っているようだ。
早速、その物体を調べてみる。
「これはプロトコル応答装置だ」
「これで部外者を判別しているのね」
俺の言葉にラーニアが付け足す。
つまり、これが信者の証って訳だ。
銅像の台詞もあながち嘘というわけではなかったらしい。
俺達は、階段を再び上り、さっきの障壁へと向かう。
途中、銅像の前に立つと神殿の地図が投影された。
部屋という部屋を調べ回った俺達には、あまり嬉しいものではないが。
それでも、あの、うるさい台詞を吐かれるよりは良い。
しばらくして、例の障壁があった場所へと辿りついた。
今度は、障壁は閉じず、何の問題も無く先へ進むことが出来た。
その先は、今までとは少し雰囲気が違っていた。
壁も金属になり、配線だか配管だかが伝わっている。
何の為にあるのか分からないが、
金属缶がピストンのように上下に動いている場所もあった。
俺達は、一番奥にある部屋に入っていった。
そこは、神殿と言うよりは、コントロールルームという感じの部屋だった。
そして、奥に鎮座している巨大な装置とディスプレイ。
「ようこそ、レデゥースの鍵を持つ者よ。我はフォレクスを統べる頭脳」
俺達が近づくと、装置は光を放ち、声を流した。仕組みは銅像の時と同じなのだろう。
「まだ、マザーコンピュータは生きているわ」
ラーニアが喜んでキーボードを叩く。ディスプレイには、質問待ちを示す記号が表れた。
「よし、いいぞ。マザーコンピュータ、知りたい事があるんだ」
「答えよう、レデゥースの鍵を持つ者よ」
すぐに声が返ってくる。音声入力に対応しているのだろう。
これならば、キーを叩く手間が省ける。俺は、次々と質問をぶつけていった。

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神殿の奥。確かにそこにはマザーコンピュータが鎮座していた。
私達が近づくと自動的に電源がオンになった。
「ようこそ、レデゥースの鍵を持つ者よ。我はフォレクスを統べる頭脳」
コンピュータの言葉を聞く限り、どうやら私達は歓迎されているらしい。
キーボードを叩いてみる。プロテクトはかかっていないようだ。
カノールが、早速質問を投げかける。
ディスプレイにカノールの言葉が表示される。音声認識システム異常なし、ね。
「答えよう、レデゥースの鍵を持つ者よ
レデゥースの鍵?何の事だ」
カノールが私の方を向いて言う。
最初、近づいた時にも言ってたよね。何なのだろう。
さっきのプロトコル応答装置は、信者の証だから、違うだろう。
あと、私達が持っているこの世界の物といえば…、武器とエネルギーパックと、ええと。
「あっ、もしかしたら、例の金属板の事じゃない」
私は、手のひらをポンと叩き合わせた。
「鍵?この金属板が」
カノールは、荷物の中から例の金属板を取りだし、掲げる。
「そう。我らが支配者の証、レデゥースの鍵
コンピュータは、即座にカメラアイで金属板を認識し、ディスプレイに映し出す。
「これにも何か重大な秘密がありそうだな」
金属板、レデゥースの鍵をしげしげと見るカノール
が、すぐに、それから目を離し、ディスプレイの方へ向き直る。
「だが、今はそれよりもヴェルビアスの事が知りたい」
ヴェルビアスは、時空を操る力。ヴェルビアスを生み出した遠き祖先の人々は、
その力を以て時空の狭間に大地を創造した。それがこの世界」

コンピュータは、驚くべき事実をを淡々と告げる。
「時空の狭間ですって?!そんな所からどうやって帰るのぉ〜」
私の悲鳴など全く介せず、コンピュータは続ける。
「時空の狭間を超えるのは…ヴェルビアスの力」
「時空を操り、この世界を創造した力か。ゲーリー教授が欲しがるはずだ」
カノールは、頷きながら言う。そして、急に顔を上げて拳を握り締める。
「おもしろい、教授を出し抜いて 俺達が手に入れてやる。そのヴェルビアスの力を」
って、やる気まんまんじゃない、カノール
「でもヴェルビアスを手にいれなければ、家にも帰れないって事でしょ。
全然、おもしろくないよ〜」

だが、私の言葉はカノールには届いて無いようだ。
「それで、ヴェルビアスはどこにあるんだ」
などと、更にコンピュータに質問を続けている。
「…天空都市レクサー
「天空都市だって!?そこまで行く方法がない。どうやって行けばいいんだ」
コンピュータに食いつくような勢いでカノールは、まくしたてる。
「地底都市…バルティモア…各都市を結ぶ交通施設がある」
あれ?様子がおかしい。
バルティモアへ続く道…」
声が所々小さくなり、雑音も混じり始めた。
「それは…神殿…の…奥……」
「おい、どうしたんだ。答えてくれ、まだ聞きたい事があるんだ」
カノールは、ディスプレイを拳で叩く。
しかし、固定された巨大なディスプレイはびくともしない。…気持ちは、分かるけどね。
「地下へ…の…ロック…解除完了…」
私は、慌ててキーボードを叩いた。が、それっきりだった。
マザーコンピュータは、再び深い眠りについてしまった。

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「くそっ、コンピュータは止まっちまった」
俺は、悪態をついた。
「地下へ…?ロック解除…?コンピュータルームに他の扉があったかしら」
ラーニアは、コンピュータの最後の言葉を繰り返す。
そして、指示通りに、マザーコンピュータの右側に行ってみる。
「あったわ!カノール
確かに、そこには扉があった。近づくと、パシュッという空気音と共に扉が開く。
ロックは、解除されているようだ。そして、その先には地下への階段があった。
そして、階段を降りた先には、石造りの神殿の通路が続いていた。
「これが神殿の奥に通じる道か」
通路の先のほうを見る。すぐに右に曲がっていて、それ以上先は見えない。
「きっとありがたい迷路なんでしょうね」
ラーニアがため息混じりに言う。
こんな感じで、ずっと通路はくねくね曲がっているのだろう。少し気が重くなる。
だが、未だ姿を見せないゲーリー教授の事も気にかかる。
俺達は、先を急ぐ事にした。
そして、迫り来るロボットの攻撃と、度々出会う行き止まりに阻まれながらも、
広間まで、たどり着く事が出来た。
広間の先にある部屋に続く扉には、例によって例のごとくロボットが立ちふさがっている。
広間を徘徊する目玉ロボットと、らせんに攻撃を放つ番兵に苦戦を強いられる。
しかし、ここには砲台は無い。
何度か、後退はしたものの、今までよりは少し楽に突破することが出来た。
扉を開け、先の部屋へ駆けこむ。
ロボット達は、ここまでは追いかけてこないようだ。
俺達は、周りに注意しながらも、壁にもたれかかって休養を取った。
「それで、どうする?」
ある程度体力が回復してから、ラーニアが問い掛けてきた。
そう、この部屋には扉が5つある。さっき入ってきた1つを除いて4つ。
あと、例の銅像も配置されているが後回しだ。
4つの扉は横に並んで配置されている。
どれが、神殿の奥につながっているのかは分からない。
しかし、悩んでいても仕方が無い。適当な扉の前に立つ。自動的に開く扉。
ふと。そこで、嫌な予感がした。
本能的に扉の横へ跳び退く。
「きゃっ……!」
ゴーーーッという音にラーニアの悲鳴はかき消された。
紅蓮の炎だった。俺が跳び退いた瞬間、扉の奥から火炎が噴き出した。
「だ、大丈夫?カノール
炎が引いた後、顔を強張らせたラーニアが近づいてくる。
「ああ。何とかな。ちょっと焦げちゃったけど」
俺は、ジャケットの肘をラーニアに見せた。
「よかった。でも、他の扉も火炎放射の罠が仕掛けられてるのかしら」
残りの3つの扉の方を見ながらラーニアが言う。
「どうだろうな。結局、開けてみなきゃ分からないんだろうな」
俺はそう言って、扉に近づく。今度は、扉の横から走り抜けていった。
前を通りすぎると同時に扉は開いて行く。
後ろに熱気と轟音を感じながらも、振り向かずに駆け抜ける。
結局、炎の罠が仕掛けられていたのは最初のを含め2つだった。
それらの奥には、火炎放射の装置しかなく先には進めない。
残り2つの扉の先には通路が伸びている。
俺達は、その内の一つ、左の通路へと進んで行った。

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「…こっちも、行き止まりね」
正直、落胆した。
あの、火炎放射器の部屋から最初に進んだ通路は、結局行き止まりだった。
まあ、その代わりと入っては何だけど、新しい武器を手に入れることは出来た。
エネルギーパックを使わずに強力なエネルギー弾を打てるバズーカ砲。
戦力的には収穫ありなんだけど、結局それだけ。他には何も無く引き返してきた。
そして、もう一方の通路を進んでいったのだが、こちらも行き止まりで進むべき道は無い。
通路の奥にあるのは、例の銅像が二体だけ…………、銅像?!
カノールも同じ事を考えたようだ。銅像に前に立って銃を構える。
前に立っても何も反応は無い。やっぱり、上でのあれと同じ仕組みか?
安全装置を解除し、カノールはトリガーを引いた。
パシュン、パシュン。銃の光線が銅像に当たり、そして、崩れた。
…、崩れた??って、あれ?何で動かないの?
カノールが、更に銃を放つと、銅像は跡形も無く崩れ落ちてしまった。
「史跡破壊…」
「ち、違うだろ!くそっ!これで先に進めると思ったのに」
私のつぶやきを否定しながら、元銅像のあった空間を蹴りあげるカノール
残念。違うのか。それじゃあ一体、バルティモアへ続く道とやらは何処にあるのだろう?
もしかして、見逃しているのかもしれないと思い、
神殿の地下中を回ってみたが先への道は無い。
行き止まりの道の途中にあった白い神像や、
火炎放射器の部屋にあった銅像も調べてみたがやはり何も無い。
「やっぱり、ここが一番怪しいんだけどな」
結局私達は、崩してしまった銅像の前に戻ってきた。
銅像はもう一つあるが、また、銃を放っても同じ結果になるだけだろう。
と、思ったのだが、おもむろにカノールは、銃を構える。
「ちょ、ちょっと!また壊しちゃうの?教授じゃないんだから」
私の非難に、カノールは、合図で答えた。
え?下を見ろ?…銅像の台座を見てみると、かすかに光が漏れている!
カノールは、再び銃を放った。今度は、銅像は壊れずにスライドしていく。
「騙されるところだった。これだけが隠し通路だったんだな」
カノールが安堵の表情を浮かべる。銅像の下に階段が表れる。
私達は、ゆっくりと階段を降りて行った。
降りたところは、広間になっていた。左右に延々と並ぶ白い神像に圧巻される。
白い神像は、マントで体を覆っている。台座も含めて高さはかなりある。
私達が、先に進むと同時に神像はこちらの方向へ向き直る。
やはり、マザーコンピュータが言っていたように、
「我らが支配者」に敬意を示すということなのだろうか。
「神殿の奥ってここのことかしら」
私は、誰となくつぶやいた。
「気をつけろよ。誰かに覗かれているような気がする」
小声でカノールが言う。
確かに、さっきから嫌な視線を感じる。最初、左右に立つ神像のものかと思ったが、
違うようだ。もっと、何か、悪意のこもった視線だ。
周りに気を配りながら先に進むと、広間の真ん中に立っている大きな神像が目に入った。
…あそこから、視線を感じる…。銃に手をかけて石像に近づく。
神像の台座の前に立った時、異変は起きた。
キィィィィンという耳障りな音がして、カノールの胸が光る。
「金属版が共鳴している。これは、いったい…」
カノールが胸のポケットにしまった、あの金属板が光を放っている。
そしてまた、声が聞こえてくる。

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「金属版が共鳴している。これは、いったい…」
神像に近づいた途端、俺の胸に収めてあった金属板が高い音を出し始めた。
そして、神像の声が聞こえてくる。
ヴェルビアス、それは神々の力。
ヴェルビアス、それは無限の可能性。
ヴェルビアス、それは我らが大地、
ヴェレアトールを支える力。
時を旅する船ラーカイア
天空の聖都レクサー
王の証たるレデゥースの鍵が揃いし時、
ヴェルビアスは復活せん。
讃えよ、神々の力を。
ヴェルビアスある限り、我ら不滅なり」

絶対の自信を持った声。神像の声は、そんな風に聞こえた。
レデゥースの鍵…、この金属板か」
俺は、金属板を手に取り寂しげにつぶやいた。
確かにこれは、王の証たる、素晴らしいものなのかもしれない。だが…。
「でもヴェレアトールの人々は、
ヴェルビアスの力があっても、滅亡してしまったのね」

ラーニアが俺の思っていたことと同じ事を言った。
「だが、ヴェルビアスは不滅だ。我が主、ゲーリー教授の力で復活する。
我々が神の力を手に入れるのだ」

…神像の声ではない。
「何者だ」
俺が叫ぶと、そいつは、神像の頭の部分から姿を現した。
一見すると、普通の青年に見える。しかし、彼の半身は機械に覆われている。
「私はゲーリー教授に仕えし者。デスハーン
貴様がラーカイアより持ち出したレデゥースの鍵を奪回するよう、教授の命を受けた。
おとなしく鍵を渡せば、 命だけは助けてやろう」

あまり、感情のこもらない声でそいつは言い放った。
その一方的な物言いに、ラーニアは、頬を膨らましている。
自己中心的で高圧的。ゲーリー教授の部下であることは間違いなさそうだ。
だったら、こちらの答えは、ただ一つ。
「そうかい、じゃあゲーリー教授に言っといてくれ。
ヴェルビアスは俺がもらった。年寄りの冷や水は止めときなって」

空間に緊張が走る。これは、殺気か?意外と切れやすい。
「うすぎたない、トレジャーハンター風情が。
その首をレデゥースの鍵に添えてゲーリー教授に捧げてやろう。
覚悟するがよい」

デスハーンは、神像から飛び降りる。
俺達は、銃を抜き攻撃態勢に入る。
火花を散らす戦いに入ろうとした時、神像が不意に動き始める。
レデゥースの鍵を持つ者、我らが主。我らは主を守護したもう」
「神像が…、デスハーンに向って行くわ」
ラーニアの言う通り、神像は俺達をかばうようにしてデスハーンに攻撃を仕掛ける。
「むうっ、 とんだ邪魔が入ったわ。いつかこの礼は返してやるぞ」
巨大な神像の前では、圧倒的不利と感じたか。
デスハーンは、何処かへと去って行ってしまった。
敵が消えた事を確認すると神像は、また、元の場所へと戻って行った。
「と、とんでもない神像ね」
あっけに取られた顔でラーニアが言う。
これで、邪魔者はいなくなった。俺達は更に奥へと進んで行く。
神殿の一番奥。扉はそこにあった。
マザーコンピュータの言った事が正しいならば、バルティモアへ続く道は、
この先にあるのだろう。
扉の前に立つ。ここも扉は自動で開いた。
果たして、俺達は無事、天空都市まで辿りつき、ヴェルビアス
手に入れる事が出来るのだろうか…。
いや。必ず手に入れなければならない。ゲーリー教授には決して渡さない。
新たな決意を胸に、俺達は扉の先へと進んで行く。



Die Bahnwelt


to be continued ...
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